撮影中にレンズを付け替える時間がない、撮影スペースが狭く充分な引きが取れない時など、24mm〜70mmをカバーするいわゆる標準ズームレンズが活躍するシーンは多岐にわたります。僕は基本的にカメラに標準ズームをつけっぱなしにしていて、なんだかんだで使用頻度が1番多いレンズです。
EOS R5で完全にRFマウントに移行してからも、標準ズームはEF24-70 F2.8 L II USMをマウントアダプター経由で愛用しています。今回、RFマウント2本目のレンズとしてRF28-70 F2 L USMを購入したので、手持ちのEF24−70 F2.8 L II USMとRF24-105 F4 L IS USMと比較しつつレビューしていきたいと思います。
購入の経緯
RFマウントをメインで使い始めてからも、アダプター経由でEF24−70 F2.8 L USMを使い続けていて、AF・解像感など不満点も特にないので高価なRFマウントの標準ズームに替える必要性もそこまで感じていませんでした。ただ、RF28-70 F2 L USMの標準ズームでF2通しという他にない性能に興味があり、いつかは使ってみたいレンズとして気になっていました。しかし、高額な値段と供給不足で市場に出回っていないなどの理由で、購入するまでには至りませんでした。
そんな感じで気になってはいても、スルーしていたRF28-70mmですが、とある撮影でF2通しの1段分の明るさが活きそうな機会があり、試しに使ってみようとレンタルしてみました。
2日間、レンタルしたRF28-70mmを撮影でガッツリ使ってみたところ、かなり気に入ってしまい購入したい気持ちが高まりました。ただ、先述のようにこのレンズは供給不足で、どこのお店でも入荷待ち状態でした。EF24-70mmを持っているので、焦って買う必要もなく、在庫が出てくるようになったタイミングで購入しようと、とりあえず忘れることにしました。
けれど忘れようとした矢先、レンタルしたレンズの返却の帰りに、何気なく覗いたレモン社のショーケースでRF28-700mmを見つけてしまいました。まさか在庫があるとは思っていなかったので面食らったのですが、返却した帰りに見つけたのも運命だと思い、その場で購入してしまいました。
外観比較
そんなわけで思ったよりも急に手に入ってしまったRF28-70 F2 L USMですが、手持ちの標準ズームレンズと比較しながら見ていきます。
EF24-70mmはRFマウントでの使用を想定してマウントアダプターEF-EOS Rを付けた状態です。
RF28-70mmは距離計が無くシンプルな外観です。どちらも外装の質感が高く、Lレンズの名に恥じないしっかりした造りです。
かなり大きいと思っていたRF28-70mmですが、長さはマウントアダプター付きのEF24−70mmとそこまで変わりません。ただ、太さが1.5倍くらいありぱっと見でRF28-70mmが異様に大きいのが分かります。
どちらのレンズもズーミングでレンズ先端が繰り出されます。テレ端では若干ですがマウントアダプター付きのEF24−70mmの方が全長が長くなります。
前玉の重さのせいか、RF28-70mmの方がややズームリングが重いような気がします。ただ、気になるレベルの違いはなくどちらもスムーズに動きます。
RF28-70mmのフィルター経は95mmです。EF24−70mmの82mmも購入当初は大きいと思っていましたが、RF28-70mmと比べると可愛く見えます。RF28-70mmはレンズ自体も高価ですが、フィルターも選択肢が少なく、値段が高いものが必要になります。
今まで特に気にしていませんでしたが、RFレンズはEFレンズに比べてレンズ前面の文字がグレーっぽくなっていて目立ちにくくなっています。
RF28-70mmが大きいのは知ってはいたのですが、レンタルで初めて目にした際にあまりの大きさ・重さにちょっとビックリしました。
1.5kg近い重量と太さのため、手で持つときは気をつけないと落としてしまいそうです。EF24−70mmも805gということで軽いわけではないですが、比較すると軽くコンパクトに感じてしまいます。
EOS Rに装着した状態です。
購入前はカメラバッグへの収納に不安を感じましたが、実際に入れてみるとレンズの全長が変わらないため、必要なスペースはほとんど同じで、そのままのスペースに収まります。
ややフロントヘビーですが、バッテリーグリップ付きのEOS Rだとそこまでバランスが悪い感じはしません。
バッテリーグリップ付きのカメラと合わせると総重量2.5kgくらいになってしまうので、気軽に持ち出すような重さではないです。
レンズフードをつけた状態で正面から見ると、カメラボディがほとんど見えなくなるくらい大きいです。
EOS R導入時に、とりあえずRFレンズを使ってみたくて最初に購入したRF24-105mmとの比較です。
RF24-105mmは700gなので、RF28-70mmの半分以下の重さで、サイズもひと回り小さくコンパクトです。
EF24-105mm F4 L IS USMを使っていて、24-105mmのズームレンズにはあまり良い印象はありませんでした。けれど、RF24-105mmはAFが早く正確で、描写もEFマウントのレンズに比べると格段に良くなっているので、F4の明るささえ問題にならなければ、RFマウントの標準ズームレンズとしてオススメです。
描写比較
3本のレンズを簡単にテストしてみました。ここからはマニアックな話です。興味のない方は飛ばして下さい。
厳密なテストではないので参考程度に。
カメラは三脚に固定して、ピントはマニュアルでライブビューを拡大して、CanonロゴのCに合わせています。明るさはストロボの出力で大体同じくらいになるように調整しています。ライティングは壁バン1灯の手抜きライティングです。
以下、EOS R5で撮影。シャッタースピード1/160・ISO100です。C-RAWで撮影しCapture Oneでそのまま現像しています。
三脚でカメラを固定して撮影して、同じ焦点距離で撮影していたのですがレンズごとに画角が変わっていました。EFレンズにマウントアダプターを付けているのが原因なのかと疑ったのですが、RFレンズでも28-70mmと24-105mmで同じ焦点距離でも画角が違っていました。調べてみたところ以下のサイトに同じ焦点距離でもレンズによって画角が変わってしまう話が分かりやすくまとめてあったので、気になる方はリンク先を読んでみて下さい。
斎賀教授のアフターファイブ研究室〜同じレンズ焦点距離でも画角が違う?
ボケ・ピント面の解像感
RF28-70mm F2 L USM 焦点距離70mm
F2.0
開放からピント面は充分にシャープです。焦点距離70mm・F2.0でこれだけ寄って撮影するとパンダの置物の形が分からないくらいボケます。
カメラ右上の玉ボケはやや口径食が出ています。
F2.2
開放でも充分シャープに見えましたが、1/3段絞るとピント面がシャッキっとします。見比べると開放ではややふわっとしているように感じます。
ボケ具合はぱっと見では違いはほとんど分かりません。周辺減光がやや改善されています。
F2.5
さらに1/3段絞ると、玉ボケがほぼ正円になります。
F2.8
ここまでくるとピント面のシャープさはほとんど違いが分かりません。
EF24-70mm F2.8 L USM 焦点距離70mm
F2.8
2012年に発売されたので、9年前のレンズなのです。古いレンズとはいえ、開放でも素晴らしい画質です。EOS R5の4500万の解像度にも対応できる性能を持っていると思います。
F3.2
RF28-70mmと同じで1/3段絞るとピント面がシャッキっとします。玉ボケの変化など含め、絞っていくとRF28-70mmと同じような変化をするようです。
F4.0
1段絞ると周辺減光は気にならないレベルまで改善され、ピント面の解像感も素晴らしいものになります。
RF24-105mm F4 L USM 焦点距離70mm
F4.0
開放だと、前の2本のレンズに比べるとピント面はややふわっとしている感じがする気もしますが、単体で見れば必要十分に素晴らしい解像感だと思います。
カメラ右上の玉ボケは口径食が出てレモン型になっています。
F5.6
RF24-105mmは1段絞ったくらいからピント面の解像感が良くなるのが分かります。玉ボケもキレイな円形になります。
RF28-70mm・EF24-70mm F2.8での比較
画角が違っているため、見辛くて申し訳ないのですが…同じF2.8で比較した場合、1段絞っていることによりピント面のシャープさではRF28-70mmに軍配が上がります。ただほとんどアラ探しレベルでの違いであり、引き画で見た場合はほとんど差は分からないと思います。
まとめ
Canonの標準ズームレンズ3本を比較してのレビューでした。
今回のテストでは解像感は3本のレンズともに優れていて、そこまでの差は感じられませんでした。
AFもポートレート・ブツ撮りではほとんど差が感じられず、どのレンズも正確で早いです。
9年ほど前に発売されたEF24-70mm F2.8 L USMも最新のRFレンズと遜色ない性能を持っていたのには驚きました。価格や携帯性、性能など総合的に考えて、それぞれのレンズのオススメポイントをまとめます。
RF28-70mm F2 L USM
他にはない唯一無二のスペックである、F2.0通しのズームレンズです。携帯性など気にせずに、とにかく最高のズームレンズを使いたいという方はぜひこのレンズを。
レンズには手ブレ補正がありませんが、EOS R5・R6などのボディ内に手ブレ補正があるカメラで使用する場合はそこもあまりデメリットにはなりません。
開放絞り値がF2.0なので、F2.8で撮影するときに1段絞って撮影できます。そのためF2.8での撮影時に開放絞り値F2.8のレンズよりもシャープでクリアな画が得られます。RF24-70mm F2.8 L IS USMとの価格差は10万円ほどなので、かなり大きいですが、1段分の明るさには10万円分の価値は十分にあると思います。
F2.0で撮影したときも十分な解像感を持ちつつ、少しフワッとしたソフトな描写となめらかなボケでポートレート撮影などにも有効に使えそうです。
EF24-70mm F2.8 L USM
少し古いレンズですが、最新のレンズに劣らない性能を持っています。
実売で20万円を切る価格も相まって抜群のコストパフォーマンスを誇ります。
標準ズームは便利レンズという立ち位置で、F2.8以上の明るさが必要であれば、もう一本単焦点レンズを用意するのが基本です。
EF24-70mm+RF50mm F1.8の2本を購入してもRF28-70mmよりも遥かに安く手に入れることが出来ます。EF・RFどちらのマウントでも使用できることも強みの一つだと思います。
RF24-105mm F4 L USM
他のレンズと比べると1〜2段暗いですが、105mmの望遠端で撮影することでボケを活かした撮影もできます。
決して軽くはないですが、他の2本に比べれば携帯性は圧倒的に良いです。
ある程度絞って撮影することが多い場合や、少しでも機材を軽くしたいときには標準ズームレンズの選択肢として必要十分な性能を有していると思います。
EF時代の24-105mmズームレンズと比べるとLレンズの名に恥じない性能に進化していると思います。
コメント