普段の撮影の仕事では広角レンズはあまり使いません。それでも広角レンズが必要な撮影はあるので、中古で買ったEF17-40mm F4 L IS USMを10年くらい使っています。軽くて小さくて写りもそこそこと、特に不満はないですが、RFマウントの広角ズームレンズでF2.8・F4通しの両方が出たので、広角レンズを入れ替えようと思いました。ただ、RFの広角ズームはF4通しですら20万円オーバーと光学です。使用頻度を考えるとあまりにコスパが悪いので、いまさらながらEF16-35mm F4 L IS USMを買ってみた(中古実用品、約82,000円)ので、EF17-40mmと比較レビューしてみます。
外観
左がEF16-35mm、右がEF17-40mmです。古いレンズとはいえ、どちらも高品質なLレンズなので造りはしっかりとしています。先代に比べて、広角端は1mm広がっていますが、望遠端は35mmになっています。
スペック | EF16-35mm F4 L IS | EF17-40mm F4 L | RF14-35mm F4 L IS |
全長 | 112.8mm | 96.8mm | 99.8mm |
最短撮影距離 | 28cm | 28cm | 20cm |
重量 | 615g | 475g | 540g |
手ブレ補正(IS) | ○(SS4段分) | ✕ | ◯(SS5.5段分) |
価格(2022年6月時点) | 121,105円(中古85,000円前後) | 109,800円(中古45,000円前後) | 212,849円 |
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他のレンズに比べて有利な点をハイライトしています。数字的なスペックだけでは表せない点もたくさんあるのでアレですが、こうして並べるとEF16-35mmだけ良いトコなしみたいです…
スペック表の重量は多分レンズフードなしの数値だと思います。レンズフードを付けた状態で実測は、EF17-40mmが538g、EF16-35mmが678gです。
全長もEF16-35mmの方が16mm長いのですが、フードを付けた状態だとそこまで差があるようには見えません。EF16-35mmは全長が長くなった分、ズーム・ピントリングともに幅広になっていて操作性が良くなっています。
EF17-40mmのフードは横幅が大きく、逆付けした状態でカメラバッグに収納しようとすると、レンズ自体の太さ以上にスペースを取ります。
スイッチ類はAF/MF切り替えスイッチとISのスイッチのみとシンプル。EF14-70mmはISも付いていないので、AF/MF切り替えスイッチのみです。
EFレンズなので、距離計の窓があります。最近のRFレンズは距離計もなく、マットなサラサラとした質感の外装でシンプルなデザインです。それはそれで良いのですが、古いキャノンのレンズのちょっとごてっとしたデザインも個人的には好きです。
解像度テスト
お手製の解像度テストチャートをA3にプリントしたものを使いました。カメラはEOS R5、三脚に固定してクリップオンの天バンライティングで撮影しています。カメラ・ソフトでの歪曲補正などはすべて無しです。厳密に並行が取れているかどうかも怪しいので、参考程度に見て下さい。
EF16-35mm、焦点距離17mm
広角端からのつもりでしたが、いきなり17mmで撮影してしまうという凡ミスです…
後でEXIFを確認して、やってしまったと思いましたが、面倒なのでそのままです。笑
それくらいざっくりしたテストと思って見守って下さい。
中央・左上の切り出し(クリックで大きい画像が開きます)
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テストチャートが小さいので、ほぼ最短撮影距離くらいまで近づいて撮影しています。
絞り開放では周辺減光が目立ちます。中央の解像度は開放から必要十分で、絞ってもそこまで顕著な改善は見られません。一方、周辺部は開放だとモヤッとしてキレがなく、1段絞ってあげることで解像度および周辺減光が明らかに改善します。
EF16-35mm、焦点距離24mm
中央・左上の切り出し(クリックで大きい画像が開きます)
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17mmよりも中央の解像感が劣ります。1段絞ると中央部分の解像感は顕著に改善します。周辺部は17mmと同じように甘いのですが、こちらは絞ったときに、周辺減光は改善が見られますが、解像感に関してはほとんど変化がないように感じます。
EF16-35mm、焦点距離35mm
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開放ではピントが外れたのかと思うくらい甘い描写です。1段絞ることで改善され、もう1段絞るとよりシャープになったように見えます。24mmのときと同じように周辺の甘さは絞ってもそこまで改善されません。
EF17-40mm、焦点距離17mm
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EF17-40mmの広角端は、EF16-35mmと比較しても、中央部分は充分にシャープです。1段絞るとより鮮鋭感が増します。奇しくも同じ焦点距離でのテストとなってしまいましたが、ゆがみ・周辺減光はEF17-40mmの方が大きいです。周辺は流れてしまっていて、圧倒的に劣っています。F8.0まで絞ればある程度は改善しますが、それでも甘いので、主要な被写体を画面端にしないなどの対策が必要になりそうです。
EF17-40mm、焦点距離25mm
ここでも焦点距離をミスしていました…
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広角端に比べるとやや甘い描写に感じます。絞っていけば解像感・周辺減光・周辺の甘さは改善されます。傾向としてはEF16-35mmと同じ感じです。
EF17-40mm、焦点距離36mm
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この焦点距離も、EF16-35mmと同じような感じで、絞り開放で中央部がかなり甘くなります。1段絞ることで中央部の解像感がかなり良くなるのも同じような傾向です。周辺部に関してはEF16-35mmよりも解像感があります。
EF17-40mm、焦点距離40mm
中央・左上の切り出し(クリックで大きい画像が開きます)
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中央部は絞り開放では甘いですが、36mmのときよりややシャープかなという感じです。こちらも1段絞ることでかなり改善されます。EF16-35mm・EF17-40mmともに、35mmくらいの焦点距離のときはあまり気になりませんでしたが、糸巻き型の歪曲がより顕著になっています。
解像度テストチャートで比較してみて
EF17-40mmは2003年に発売されたので、18年も前のレンズです。EF16-35mmですら、2014年発売で8年経っている新しいとは言えないレンズですが、4500万画素のEOS R5で使用しても、必要十分な解像性能です。どちらのレンズも望遠側はやや甘い描写となってしまっていますが、少し絞ってあげれば改善します。F4.0通しの広角ズームレンズなので、用途としては開放で背景をボカすというよりは、絞って使うことのほうが多いと思うので、そこを割り切って使用すれば、どちらのレンズもまだまだ現役で使用できる性能を有していると思います。
屋外での実写テスト
三脚でカメラを固定して、同ポジションから撮影しています。1mmの焦点距離の違いで、写る範囲がけっこう変わるので、広角レンズとしてはEF16-35mmの方にかなりのアドバンテージがあります。
小さい写真で見ても、EF17-40mmの方が明らかに周辺が流れてしまっているのが分かります。周辺の光量落ちもEF17-40mmの方が大きいです。
EF17-40mmの方が色味がややあっさりしている印象で、好みの問題ですが個人的にはEF17-40mmの方が好きかもしれません。
次はレンズの歪曲をチェックしてみます。
どちらもカメラ・ソフトでの補正はオフにしています。両方ともタル型のゆがみが出ていますが、EF17-40mmの方がややゆがみが強く見えます。風景などの遠景では気になるゆがみはほぼ出ません。
CaptureOneで現像時にレンズプロファイルで補正したものが下の写真です。
EOS R5+EF17-40mm、焦点距離17mm、F4.0、SS1/500、ISO100
プロファイルを使用することで簡単に歪曲補正が可能です。ゆがみを取るために変形している部分がトリミングされるので、無補正のときと比べて画角がやや狭くなってしまいます。そのため、補正前提での使用の場合は、写したい範囲よりやや広めに撮影しておく必要があります。室内など物理的に引いて撮影することが難しいときには、広角端1mmの差がより力を発揮してくれそうです。
続いて、屋外実写での各焦点距離の中心部と周辺部を比べてみます。
結果は室内でのテストとだいたい同じで、広角端が一番解像感があるように見えます。望遠側になるにつれ、解像感は落ちていきます。同じ35mm同士だと、EF16-35mmの方がシャッキっとしています。ただし、EF17-40mmは望遠端になると、35mmのときよりも解像感が出ます。
次は広角端での周辺部の画質です。絞り開放と1段絞ったF5.6で比較しています。
こうして並べると、EF17-40mmの周辺部は画像が流れてかなり解像感が無くなってしまっているのが分かります。それに比べて、EF16-35mmの方は周辺減光はあるものの、解像感という点では絞り開放から充分に使用可能な性能です。
EF17-40mmはやはり、2世代前のレンズということで、周辺の甘さや広角端が1mm狭いなどやや不利な点も見受けられますが、構図の工夫や絞って撮影するなど、使い方次第では充分現役で戦えるレンズかと思います。
古いレンズとはいえまだまだ現役での使用に耐えうる性能
10年使用した広角ズームのリプレイスとしてEF16-35mmを購入しました。前々からEF17-40mmの周辺の甘さなどやや気になるところはあったのですが、あまり使用しないこともあってそのままにしていました。比べてみると11年分の世代の差ははっきりと感じるものの、EF17-40mmもLレンズの名に恥じない高性能さで、まだまだ現役で活躍してくれるレンズだと感じました。
それぞれのレンズのメリット・デメリットは、
EF16-35mm
メリット:前世代のレンズに比べてかなりの改善が見られる周辺画質と1mm広くなった広角端。レビューでは触れませんでしたが、手ブレ補正内蔵でいざというときにシャッタースピードが稼げる。
デメリット:EF17-40mmに比べるとやや高価(それでも、RFレンズと比べると半額ほどです)。大きく重いレンズ本体。
EF17-40mm
メリット:軽量・コンパクト。圧倒的なコストパフォーマンス(中古で探せば40,000円を切る値段で手に入れることも可能です)。17〜40mmをカバーするズーム倍率の高さ(このレンズ一本でかなりの範囲がカバーできます)。
デメリット:広角側の狭さ(広角の1mm差はかなり大きいので、RFと比べた場合は見劣りします)。周辺画質の悪さ。
以上の点です。
どちらのレンズも、4500万の高画素での使用にも耐えうる性能を持つ素晴らしいレンズです。
多少の画質低下や広角側の狭さに目をつぶっても、1gでも荷物を軽くしたいから、EF17-40mmを持って行く。
絞り開放で明るさを担保しつつ、隅々までクリアな描写を求めてEF16-35mmを使う。
などのように両方のレンズを持っていても使い分けが出来るくらいに、それぞれに良い点があります。
RFレンズは標準域のズームレンズを中心に3本所有していて、それぞれ最新のCanonのレンズの良さが体感できる素晴らしいレンズなので、最新の広角レンズのRF14-35mmも気になってしまいます。
それでも、一昔前のレンズであるEF16-35mm・EF17-40mmの両方とも、現在の高画素機でも通用するパフォーマンスを秘めているので、広角ズームを検討するときには、ぜひ頭の片隅にとどめてみて下さい。
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